2012年4月1日日曜日

「天国と地獄」

既存の楽曲を使うときは、著作権に配慮することはもちろんだ。
それより以前に気を遣うのは「先行するイメージ」であったり、個人の抱く印象であったりする。

運動会のホームビデオであれば、「天国と地獄」とか「ウィリアム・テル」とか「クシコス・ポスト」なんかが入れば、映像が無くても「運動会」だったりする。逆に、学芸会のビデオでこれらのBGMを入れると、見ている人のアタマの中は「運動会」になってしまうので、突如舞台上に玉入れの篭が出現したり、上手と下手に分かれて綱引きが開催されてしまっても不思議ではなくなってしまう。

ずいぶん前の話だが、学生が映像作品のBGMに中島みゆきの「狼になりたい」をはめてきた。本人は意気揚々と上映を始めた。コンセプトは「前向きに、元気だしていこう」という趣だったのだが、音楽が盛り上がったところで、突然、一人の女子学生が大声でおいおいと泣き始めた。上映している本人はびっくり仰天である。
泣き出した女子学生に聞くと、作品に感動したわけではさらさらなく、数週間前に男に振られたとき、喫茶店でかかっていた音楽だったらしい。かなり大恋愛の大失恋で心の痛手もまだ癒えず、心折れそうな毎日を送っていた。そんなときに、映像はポジティブな内容なのに、音楽はつらい思い出、心の傷をえぐり、ほじくりかえしてしまった、らしい。

多くの人が聞く音楽は、それぞれに違うイメージを持たれたりする。自分の抱くイメージが「一般的」で「普遍的」だと思ってはいけない。

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