2012年8月26日日曜日


助手として勤務していた時分、夏休みには写真の授業の夏合宿、というのがあった。
ノルマではなく有志で、先生と一緒に、清里にある学校のセミナーハウスで2-3泊遊ぼう、などという軽いものだった。今は、いろいろと手続きが煩雑になったりして、あまり実施されないようで残念であるが。

現地集合、現地解散、お決まりは朝食前のご挨拶と、みんなで夕食を食べることくらい、である。学生の都合もあって初日だけ参加とか、お泊まり無し、などというのもいたが、大イベントはやはりバーベキューに肝試し、というところである。

肝試しは、そういったことが好きな学生が、事前に仕込んだり、ルートを決めたりして準備する。途中に出るお化けなどもいろいろ工夫する。まあ、楽しいイベントである。

バーベキューは施設内の屋外コンロを借りるのだが、食材などの準備は自前である。先生の自家用車で近所のスーパーへ肉や野菜の買い出しに行って、学生が分担して下準備をする。
途中で、ご飯用の米がないことに気付いた。
「お米、誰か買ってきてる?」
肉やたれやキャベツに没頭して、誰もご飯粒は気にしていなかった。あわてて学生に米を買って、仕込まないと夕食に間に合わないヨー、と注意する。
元気よく、はーい、買いに行きマースと返事をする学生がいた。じゃーよろしくーと、送り出す。
2-30分でお米買い出し部隊が帰着。しかし手ぶらである。
「重たいので配達頼んじゃいました。すぐに来るそうです」
領収書の金額がびっくりするほど高い。学生は最高級の魚沼産コシヒカリを購入してしまったのだろうか。しかしそれにしたって高すぎる。
しばしの後やってきた米屋の軽トラックから降ろされたのは、やけにでかい米袋である。
まいどー、と帰ったあとで、眺めると、コシヒカリではなかったが、米は20kgである。
当日のバーベキューの参加人数は20名。買い出しに行った学生は、1人あたま1kgで米を購入してきたのである。

お母さんのお手伝いをしたり、自炊をしている学生を買い出しにやるべきだった。
もちろん炊いたのは、2kg程度、残りはセミナーハウスの食堂に買い取ってもらった。

2012年8月11日土曜日

定年後


通学生にとっての夏休み、通信教育課程では学内を使って「スクーリング」をしている。
普段は郵便や小包で課題やレポートをやりとりしているのだが、いくつかの単位は、教室に出向いて実技をして取得する、というシステムになっている。
地方に在住しているが、美術を学校で学びたかったり、教員資格を取りたい、といった人が「学生さん」だったりする。10年ほど前に短大から4年生になったので、堂々「学士」の資格も取れるわけである。
スクーリングは、入学年齢不問、入学選抜試験もないので、さまざまな学生さんがいる。教室やアトリエでは、先生より年齢は上、といった学生さんもいる。通学の方では、学生さんの年齢はほぼ横並びなので、新鮮な風景でもある。
私が大学に勤務していた時分に、父が定年になった。退職者のOB会や、学校の同窓会では、「定年したら何をするのか」というのがその世代の話題だったようで、ある日そんな会から帰った父が言った。
「会社で同期の○○くんが、お前の学校の通信教育課程にいるらしいぞ」。
父の勤務していた会社は金融系、お堅い商売である。○○くんは定年退職後、趣味に生きようと思い、昔志した絵画の道を歩もうと思ったそうである。まず、学校に通おうと思うのがお堅い商売していた人らしいなあ、と思ったが。

数日後、父の友人の受講している授業の終了を待ち構えて、挨拶に行った。その頃は、学内の冷房設備はほとんどなくて、暑い構内だったが、汗を拭き拭き、大きなカンバスを抱えているオジサンは、とても楽しそうだった。


通学している学生は夏休み、こちらも当然夏休みなので、学生や学校ネタはお休み。
ところが、学校には通信教育課程というのがあって、こちらは夏休みは通学生が来ない校舎を使って、スクーリングという面接授業中。施設の方はフル稼働である。
通っている学校の通信教育課程というのは、ずいぶん前からあって、1951年というから、年季のいったものである。
私が学生の頃から、夏休みは私物を持って帰るようにと、教務課があちこちに貼り紙をしていた。夏休み中は、全く別の学生が、全く別の授業をしたりするのである。通学生の試験が終わるとすぐ、学生のアルバイトを動員して、学内の模様替えである。8月終わり頃にはスクーリングも終わるので、通学生のための現状復帰である。
もちろんそれに合わせた商売というのもあって、学校周辺の安アパートでは、「夏期休暇中の又貸し」というのがあった。まあ家財道具が少なかった頃で、貧乏学生だし、8月分の家賃はただになるし、というものである。盗られて困るようなものがない男子学生でそういうアパートに入居したのがいた。9月に戻ってきたら、むしろ備蓄食料が増えてた、などという話もあった。
学校に通うのに車を使っている学生は、周辺の民間駐車場を借りていたが、こちらも「夏期休暇中の又貸し」制度あり、というのがあった。
今は、学生の所持品もたくさん増えた一方、車を持つ学生が減っていたりして、スクーリング学生相手の商売というのも、ずいぶんと様変わりしたのではないかしらん。