2021年7月14日水曜日

必須

 美術学校の学生にとってなくてはならないもの、と言えば、鉛筆に紙、であった。鉛筆1本持っていれば、食っていける、という時代もあった。華僑の必須道具は刃物、床屋料理人仕立屋という商売は、世界どこでも必須な商売である。

今や、それはコンピュータ、ということになるのだろうか。刃物も、上を見ればえらく高額だったりするものだが、コンピュータは桁が違う、しかも刃物よりも消耗品としての耐久性が短い。

しかし、勤務校では、学生の「必須画材」としてコンピュータはあまり推奨されていない。やはり桁が違うからなのだろうか。デッサン用の鉛筆や絵筆を貸してくれるアトリエはないし、よほど大型でなければ常用のカメラを貸し出すスタジオもあまり聞いたことがない。工房貸し出し機材は、学生が占有できるわけでもないし、24時間365日貸し出せるわけでもない。しびれを切らした学生は、自分で機材を調達することを考える。とある学生は、周辺機器も含めて高額なので、当然のようにローンを組み、分割払いにする。なんと英断かと、同級生から一目置かれた。2年の始めに36回払い、これで卒業制作まで何とかなる、と思ったはずだ。悲しいのは、こういった業界では日進月歩であることだ。12回のローンが終わったところで、機材もシステムもバージョンアップ、周辺機器も当然のように新機種を発表、24回が終わったところで、機材は既に「旧機種」になっており、購入時の金額でCPUの速度は倍増、内蔵HDDは容量が倍になっていた。卒業制作にかかる頃には既に「時代遅れ」の感があり、でもローンの残額があるので機種変更や転売が出来ない。結局、イライラしながら卒業制作を進めていた。

教訓。コンピュータはローンで買わない。

2021年7月13日火曜日

教材

 映像を始め、クリエイティブな作業にコンピュータが入り込んできて久しい。ここ数年で授業内のコンピュータの運用方法が変わってきた。

10年以上前は、学生にとってはかなり高額な機材だった。大学であっても、高額だったので数を潤沢に用意できるわけではなかった。その頃の研究室の機材の予算は年間数百万、指が片手で済む程度だった。グラフィック用のワークステーション、なんぞは年間予算をはるかにオーバーする額だった。だから、機材として導入されても、学生一人が占有するわけにはいかない。順番待ちも多く、従って、夜間にレンダリング、などという状況になった。機械は24時間働きっぱなし、である。ご苦労様であった。

必要な機材、にコンピュータがリストアップされて、研究室の機材として用意されるようになり、次第に数も増えた。こういった機材は、専用の「場所」が必要になる。ラップトップではなく、デスクトップ、いくつかの機械がつながっており、授業が終わったら片付けよう、といったものではなかったからだ。

ドミノ倒しのように、コンピュータ増える、教室増える、コンピュータのためにエアコンが必要、全校舎エアコン完備、コンピュータは永久に使えるものではないので、4-5年を目処に入れ替え、システムやソフトウェアの管理維持、全学的にコンピュータのネットワークシステム導入 などなど、あれよあれよという間だった。もちろん、ロハで導入されているわけではないので、それは学費や設備費として反映される。美術大学はアトリエという場所さえあれば良い、という状況から一転、最も性能の高いコンピュータが必要なので、学費はどんどん上昇した。

コンピュータがなかったころ、最もお金のかかる「教材」は、ヌードモデルだったりしたのだが。

2021年7月12日月曜日

勝てない

 担当授業は夏休みまでの9週間である。3週間のプログラムを3クラス、というのが前期のノルマだ。寄る年波、なのか、肉体労働が今年度は少々きつくなり、なかなかブログまでたどり着けなかった。くやしい、である。

やっと前期授業も一段落したので、溜まっていた分もぼちぼち整理できると、ホッとしている。何より、授業は午前中なので、朝は気が抜けない。早寝早起き、が必須である。本に熱中して夜更かし、などしたら、寄る年波、なので朝がきつい。徹夜が出来なくなって久しいが、寄る年波、になると夜更かしで辛いのはいわゆるかすみ目というやつだ。以前は判断力がいまひとつスピードに乗らない、とか、集中力が続かない、とか、ブツブツ言いながらやっていたのだが、目の方は、それに勝る「ハードル」だった。

いやあ、これはいかんいかんと、睡眠時間確保作戦と思ったのだが、こちらも寄る年波、で、寝付きが悪い、眠りが浅い、という状況に陥る。どうあがいても、トシには勝てない。

2021年7月11日日曜日

対面

 昨年の春には感染症による休校措置がとられ、面接授業はとりあえず延期された。感染が一段落すれば面接授業再開、とアナウンスされたのだが、実際に再開したのは7月に入ってから、例年だったら夏休み突入の時期だった。コロナが怖いか、熱中症が怖いか、と言いながらマスクして実習、終了時のチャイムと同時に清掃のオジサンたちが、アルコールスプレーとウェスを持って突入、あちこち拭いていた。

今年度は、講義科目は原則的にオンライン、実習科目は原則的に対面授業、で新学期が始まった。担当科目は5月のゴールデンウィーク中に始まった。学生さんも慣れたもので、あまり「密」だとナーバスになっておらず、清掃も次第に「セルフサービスでよろしく」状態になりつつある。

昨年同様、教室面積によって収容人員が決められていたので、教室や工房は分散状態、学生はともかく、教える側は教室をあちこち走り回ることになる。健康上よろしいことに違いない、と思うことにした。

換気のために、扉や窓は開けており、そのため廊下を伝って隣の授業の音声が入り込む。普段は肉声で話す人なのだが、マスク越しで学生に聞こえにくいと思っておられるのだろう、マイク使用でボリュームが大きい。こちらの教室で私が肉声で話していると、当然のように聞こえづらくなる。音声のマスキング効果である、と学生さんに実地指導する。

というわけで、今年度も運動量多めの面接授業となった。