初めて買った機械は、コンピュータではなく、いわゆる「ワープロ」というマシンだった。文書作成と印刷だけ、和文タイプの電子版といった趣だった。
文書の表示は液晶画面、数文字×数行、WYSIWYGなど夢のまた夢だった。日本語変換もたどたどしく、文節など理解しないので、単語+助詞くらいで、まめに変換キーを押す。変換効率もいまひとつなので、ひとつひとつ漢字をJISコードで探した。
それから思うに、現在の環境はすさまじくすばらしく発達したものだと思う。ワープロはマシンではなくアプリケーションになったし、日本語変換ソフトも毎年のようにバージョンアップしている。文脈で判断するので、かなり長い文章を打っても、かなりの精度で正解の漢字を返してくる。流行語や政治家、タレントの名前もバージョンアップごとに新しいのが入ってくる。アプリケーションなのだから、誰かが「ことば」を選んだり、変換できるようにプログラムを組んでいたりするんだろう。ときどきおせっかいな変換もするので、「大きなお世話」だと思うこともある。
何文字かを打ち始めると、その後に続く文章を推測して提案してくる。というのが、この日本語変換ソフトの「売り」である。
「じつは」と打ち始めると、「お願いがあるのですが」が出てくる。別にいつもお願いをするために文書作成をしているわけではないのだが。
「とりあえず」と打ち始めると、「生中」が第一候補である。私がそのように入力、変換したことはないので、きっと誰かのせいだと思う。しかしワープロで飲み屋の注文を考えたりするのは、シナリオ書こうか、というときぐらいだと思うのだが。
こういうのが出てくると、プログラミングしている誰か、が見えてくるようだ。機械であっても、人間の手を経てつくられているんだなあとしみじみと思うのである。
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