2012年5月10日木曜日

逆再生1

とあるグループ展で、逆再生のビデオが上映されていた。逆再生するだけで事象は新鮮に見えるもののようで、表現として評価している人がいた。ただ、作品そのものは、逆再生したからと言ってそれが何か、という気がした。単に逆再生を作者が楽しんでいるだけ、という印象があった。
もちろん授業でも逆再生を使う学生はいる。初心者であれば、逆再生するだけで「表現」した気になるものらしい。それだけで手を叩いて自分でウケていたりする。
前にも書いたが、たいていの手法というのは先に人が手垢を付けているものが多い。逆再生の手垢、とはどの辺かと言えば、映像の歴史になってしまう。

シャルル・エミール・レイノーによって開発された動画上映装置テアトルオプティークは、帯状のフィルムに描かれた画像を壁面に投影する。上映は映写技師がハンドルを使って手回しで行うもので、フィルムは一定方向へ定速度で進行するものではなく、ストーリーによって技師がストップや逆回転を使って効果を出していた

1896年にルミエール兄弟によって撮影され、上映されたフィルム。最初の「逆回転の上映」で、崩れた壁が元に戻る。

1907年に制作された。すでにカットで組み立てられ、シーンとシークエンスの区別があり、スラップスティックなストーリーが組まれている。かぼちゃの移動に逆回転とストップモーション、書き割りなどが効果的に使われ、映像内で現実とは違う世界観を描こうとしている。

1900年代初頭から、エジソンが興行を始め、追随してさまざまな上映装置と作家が作品を制作した。フレーゴリも逆回転でストーリーのあるものを制作したという記述があるが、現在は作品をあまり見ることができないようだ。

フィルムでは逆再生は比較的使われた手法である。フィルムという構造のおかげで、扱いやすい「特殊効果」でもあり、時間をパッケージングするメディアの特質をよく表している。特徴的なのは、「逆再生」を効果として扱うことで、通常の再生を再認識するような構成をつくっていることだ。

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