2012年5月13日日曜日

モニター

映像制作には必ず音声の作業が伴う。だから、授業の始めに、ヘッドフォンを持っている人はご用意ください、と伝える。

映像の現場で使うヘッドフォンは「モニター」と呼ばれるタイプ。オーバーヘッドの密閉型のものだ。
かたや、学生がよく持ってくるヘッドフォンは、iPodやMP3 プレーヤーにつなぐもので、オーバーヘッドのイヤーパッドがついていても、開放型。外の音が聞こえる代わりに、シャカシャカと音漏れする、アレである。まあ開放型でも、ないよりマシなので、とりあえずそれで作業をさせていたりする。

町中で使うようなものは、密閉型だと車のクラクションも自転車のベルも電車内のアナウンスも聞こえないので、とても「危険」である。道の真ん中で自転車のベルに気付かずに後ろから激突されたり、電車やバスで乗り過ごして遅刻することになる。
だから、開放型のヘッドフォンを使っていて「音楽だけに浸りたい」人は、音量を大きくして、外部の音をマスキングする、という作戦に出る。自然と漏れる音も大きくなる。シャカシャカしている人は、それである。

学生とミキシングの作業をしていると、学生さんの耳が悪いのでは、と思うことがある。かすかな、小さな音を、拾えない。衣擦れ、木の葉の落ちた音、傘に落ちる雨音、本のページを繰る音、台詞やBGMに比べると音量レベルはかなり低い。そういった音を聞き取れない学生が多い。

人間の耳は、一旦過大入力されて鼓膜が痛むと、回復は出来ない、と音響エンジニアに聞いたことがある。大音量のコンサートをするようなロックのバンドマンやスタッフは耳が悪くなる、と言うのである。同様に、シャカシャカと音漏れするような聴き方を長時間、繰り返すことは、耳にはよろしくない、とよく注意された。

映像制作には健康根性体力、自分の肉体が「道具」である。

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