2012年5月14日月曜日

アトムの足音

映像をつくる、という作業の中で一番楽しいのは、音の作業だろう。

アニメーションをやりたい、という学生さんはたいてい一生懸命絵を描こうとしている。しかし、絵を描いただけでは最終的に作品としては「いまひとつ」。最後にどんぴしゃな「音」がはまってこそ、本来の意味のanimateになるような気がする。

アトムの足音、ゴジラの叫び声、存在し得ない「ものおと」が、物理的な「音声」として聞こえる。作った効果マンの苦労はいかほどのものだっただろう。

そう思いながら、昔々の時代劇映画など眺めていると、チャンバラのシーンでは無音であったりする。殺陣に音が入ったり、人を斬る音を最初に使ったのは黒澤映画、というのが通説である。芝居用の作り物の刀や役者では、実際に音は出ない。しかし「音源」が見えているので、音が入れば臨場感たっぷりである。他者の効果マンが、黒澤組のスタッフをごちそうぜめにしてネタを聞き出したが、企業秘密でガセをつかまされた、という話もあった。

映像に付けられた「音」は、ごく自然にその音源から発せられた「音」として認識してしまう。日本人は「音」について、西洋人とは違った感性を持っている。だからこそ、アトムの足音が作れたのだろう。

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