2012年3月25日日曜日

運動会


同居人が小学校勤めだったこともあり、そこのイベントには何度か裏方の手伝いがてら、お邪魔した。

小学校のイベントと言えば、運動会である。学校によって、春だったり秋だったりするが、校庭の風景は似たり寄ったりだ。大きなトラック、スタートやゴールのゲート、旗やバナーで飾られた校舎、キャンバス地のテント、父兄用の応援エリア。
父兄の応援席では、電機メーカーの広告のように、子どもを撮影するにわかカメラマンがたくさん出現する。

20年ほど前は、持ってくるカメラはコンパクトカメラ。オートフォーカスのズームレンズが主流だった。
それからほどなく、8ミリのムービーカメラが混ざるようになった。我々の世代だと8ミリフィルムだが、こっちはビデオである。お父さんビデオ、お母さんカメラ、という布陣である。
もう少しすると、カメラはデジタルカメラになる。より小型化するか、焦点距離の長さで競うようになる。その後数年で、コンパクトなデジタル一眼レフに入れ替わる。
その時分には、ビデオはデジタルビデオ、より小型化してバッテリーの持ちも良くなる。お父さんはデジタル一眼、お母さんはビデオという布陣になる。

こちら側から父兄席を見ると、さながらレンズだらけである。報道陣のカメラ席のようだ。
しばらく前までは、ファインダーとレンズの方向はたいがい一致していたので、目玉の代わりにレンズがこっちを見ている、という風情であった。両方デジタルになってから、父兄はファインダーではなくモニターを見ているようになった。レンズはこっちを見ているが、顔は下向きだったりして視線とレンズの方向が一致しない。
子どもが頑張って綱引きしているのに、父兄は下を向いている。子どもは父兄ではなく、レンズに向かって手を振っている。

父兄が見て、応援しているのは、子ども本人ではなく、モニターのなかの虚像である。

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