2012年1月31日火曜日

ブランド


地方出身の、美術予備校に通ったことがないような現役学生だって、美術学校を受験する。会場では、そういう学生が、少数派ということもあって、よく目立つ。
インターネット通販などなかった時代なので、道具の揃え方がまず違ったりする。鉛筆の種類や、画材のメーカーといったところだ。

試験慣れしていない現役学生はまず隣近所の「道具」でびっくりしてしまうことがある。試験監督に昼休み、そーっと「あれは何でしょうか」などと聞いてくる。
髭面の多浪が、ステッドラーの青軸で描いている横で、詰め襟の現役男子がトンボの緑軸の鉛筆を鉛筆削り器で削りながら使っていたりする。持ち込む鉛筆の本数も2倍や3倍以上は違う。髭面は現役男子の道具を眺めて鼻で笑ってみたりする。

道具が合格を決めるわけではない。モチーフを眺めるまなざしは、誰もが真剣だった。

0 件のコメント: