2012年1月16日月曜日

伊勢エビつき

大学では年が明ければ学期末、卒業制作展が1月末に設定されている。
制作をしなくてはならない学生に正月はない。
学生生活の中で、いちばん制作に没頭する(あるいはせざるを得ない)状況ではある。

12月末から1月初めの授業の初日まで、基本的に学校は冬休みである。
学校の工房やアトリエは、研究室が管理していて、教員や助手などのスタッフがいなければ鍵は開かないという規則になっていた。特殊な機械や道具、スタジオなどは、管理者が必要だということだったのだろう。冬休み明けまで待てない、という学生が必ず毎年いた。
大学を卒業して助手として残っていた数年でも、ほぼ毎年のように、大晦日か正月三が日に学生から電話がかかってきた。この時とばかり、猫なで声で「お願いですう」、である。
逆に作業をよく知っていて、スケジュール的に「あぶなっかしい」学生もいる。そういうのに限って余裕を感じているらしい。暮れも早くに学校の作業を切り上げてしまった。全然危機感がない。こちらから電話する。「来ないと終わらない(=卒業できない)と思うんだけど」。

さすがに三が日はごめんだが、たいてい4日の朝から学校に通うことになる。大学正門の守衛室は、伊勢エビ付きの正月飾りがあったりする。
そのころはまだのんびりした時代だった。
一升瓶にお年賀ののし紙を付けて守衛室へ持っていき、「すいませーん、早くから」と挨拶する。守衛さんも心得たもので、「また今年も早くからお疲れさーん」と、昇降口を開けに来てくれた。

当然、本来、学内は冬休みである。主に作業をしていた建物はスチーム暖房だったので、ボイラー室が動かないと暖房は使えない。防寒着をおそろしくたくさん着込んで、学生さんの作業を手伝ったりした。

今はもっと管理がきちんとして、ドライにもなっているから、手続きなど事前に済ませなくてはならないだろう。「すいませーん」という時代ではないのかもしれない。

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