大学も1月の期末試験を過ぎると、学生さんは「春休み」に突入する。
昨今の上級生は就職活動でお忙しいかもしれないが、私どもの時分は就職するなど思いもよらなかったし(女子学生は短大の方が就職率が高かった時代である)、男女雇用機会均等法もない時代(就職条件に「大卒男子のみ」というのが多かった)で、大半の女子学生は4年生で卒業制作を終えてから、ばたばたとその後の人生を決めていた。
それ以前、2-3年生の頃は、単なる長い春休みなので、遊ぶか、遊ぶ金を稼ぐか、の二択である。
美術学生のアルバイト事情というのは、普通の学生とは違って「手に職」があるというのが強みである。
学校近所の喫茶店は普通だが、美術予備校のアルバイト、デザイン事務所の使いっ走り、建築模型制作、デパートのショーウィンドウの展示替え、などとというのが王道ではある。
しかし世の中は狭いもので、思わぬところで卒業生にでっくわす。
数年前に家の墓地を整理するのに、石屋を頼み、話をしていたら彫刻出身だったことがあった。
彫刻という学科は、作業の関係上、学生の間に何かと資格を取ったりする。溶接、危険物取り扱い、フォークリフターなど特殊車両取り扱い免許などで、これを使ったアルバイトもよくやっていた。石彫をする学生もいるので、石屋さんのアルバイトも、彼らにとっては当然の成り行きだったかもしれない。就職口もいろいろあって、私が意外だったのは「マネキン屋さん」だったりした。デパートのショーウィンドウに並んでいる、あのマネキンを造るのである。すごーく「手に職」だと感動した。マネキンをつくるために彫刻を専攻するわけではないだろうが、それでも私などには出来ない仕事なので、ものすごーく感動した。
彫刻科ばかりではないが、植木屋になった友人もいたし、不動産屋になったのもいる。なぜかダンサーになったり、当然のようにミュージシャンになったのもいる。喫茶店のマスター、なんていうのもある意味「憧れの商売」ではあった。もちろん、アルバイトが高じて本職になったのもいる。
人生、入った大学や、学生時代の専攻分野だけでは決まるものではない。将来何がメシのタネになるかは、若い内には分からないものである。
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