美術学校の卒業制作のほとんどは「展示」という形態である。
絵画や彫刻をはじめ、グラフィックやプロダクトなどのデザインもパネルプレゼンテーションや実物を展示する。
普段教室やアトリエとして使っている場所に展示をするわけだから、展示のための「壁面」を臨時につくってしまう。自立式の柱を立てたり、天井と床を「突っ張る」ポールを立てて、壁面をつくっていくのである。
学生は予め、一つの教室に入る作品の数や大きさなどを調べて、教室にどの程度の長さの「壁面」が必要かを割り出す。その「壁面」をつくるために必要な資材を割り出す。ポールが何本、パネルが何枚、固定用ボルト何個、などという具合である。美術学生さんが一番苦手な「算数」が必要で、四苦八苦しながら計算した。
数を確認したら、大学の施設課に在庫を確認し、必要数を確保、展示準備期間中に資材を倉庫から運び出して、設営、という段取りである。
もちろん展示終了後の後片付けにお掃除、すべてが終わって「シャンシャン」である。
こういう地味な作業がきちんと出来て一人前、作品の数や大きさをきちんと申告しなかったり、準備期間中の資材運搬や最後のお掃除に参加しなかったりすると、その後、ものすごーく険悪な雰囲気になってしまう。卒業式、謝恩会どころではなく、その後の一生、元クラスメートと会う都度、「そういえば、あの時は、手伝わなかったねえ…」などと思い出される羽目になったりする。
設営作業は、2メートル以上の鉄柱や、サブロク(90x180センチ)のコンパネや有孔ボードなども運ぶので、肉体労働である。エレベーターのない校舎では、3階、4階へも自力で運び上げることになる。ここ最近美術学校の女子率は非常に高いので、大変そうだ。
しかしこういった資材運びだけで、体力を使い果たしてはいけない。「本番」は、臨時壁面が出来上がったあとの、自分の作品の展示だからである。こちらは「各自」の作業になるし、評価に直接反映するので気を抜けない。
まあ、こんなことで弱音を吐いていては、社会ではやっていけない。
毎年、4月の新入生に言うのだが、美術関係のお仕事をやりたければ、センスや感性やスキルよりも大切なことは「体力、健康、根性」なのである。
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