撮影する、ということは、学生にとっては「特権」に思えるのかもしれない。
毎年、作品のプランを聞いていると、よく出てくるのが「エレベーターを使う」ものだ。
遅刻しそうになってエレベーターに飛び込む、エレベーターに乗ったら突然止まってしまった、急いでいるのにエレベーターは満員である、といった、生活状況に絡むものは、ごくごく自然に使われる。エレベーターに乗って到着階に止まったらそこは異次元だった、といったものまである。
学生さんのプランは、常日頃使っているものやこと、道具から発想することが多い。特に、最近使い始めたもの、使っていることが「面白い」とか、他者と違うと思っているものを使う傾向がある。エレベーターもその類いなのだろう。
学生さんに欠けてているのは、エレベーターは撮影用の小道具ではない、という視点である。
学内の通常生活圏内で撮影を行う。特にこの作業のために学内では特別に配慮されることはない。エレベーターもしかりである。
数年前に、エレベーターを使った撮影をしていたグループがあった。通常使用範囲内で、というお約束であったのだが、私やティーチングアシスタントが見ていない隙を狙って、彼らは「通常ではない使用方法」で撮影をしていた。長時間占有し、ワンフロアに長時間停止させ、他の利用者を乗せずに上下を繰り返した。通常の使用とは動き方が違うので、エレベーターの管理者がとんできた。学生は「故障じゃないですよー」と明るく振る舞ってしまったので、こちらは大学の施設管理者からご注意を受けたことは言うまでもない。もちろん、こういった「授業の小道具として」今後エレベーターは使わない、というご注意である。
かくしてエレベーターも「使用注意箇所」になっていった。
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