2014年7月18日金曜日

言葉で言えば簡単なことなのだが、実写では映像として撮影することが難しい、ということはたくさんある。たいていの初心者の場合、それはあまり認識していない。だから、プランを聞くと「ありえなーい」ことがたくさん出てくる。

純情そうな女子学生が紙にスケッチをしている。風が吹いて、スケッチが飛ばされる。スケッチは、ひらひらと植え込みの木々の間をすり抜けて、落ちていく。スケッチが地面に落ちたところに男子学生が通りかかる。男子学生はスケッチを手に取る。そこには自分の姿がある。彼は、周りを見回す。向こう側の木陰に、スケッチブックを抱えた女子学生が立っている。

…などという描写がときどき出てくる。20前後の若い女子学生の考えそうなシチュエーションである。
ほんとにこれで撮影するのか、と一応、本人には確認する。本人はやってみます、とやる気満々である。じゃあ、やってみてよ、と撮影に送り出す。

いやいやこれが、実写では難しいのである。案の定、撮影している現場で立ち会うと、別の作業をしている。本日は無風。そよとも風が来ない。
翌日は、数名で団扇を用意して待機中である。ばたばたとあおいで、紙を飛ばす作戦である。遠すぎると紙は飛ばない。近すぎると団扇が映り込む。飛び始めはいいのだが、木々の間をすり抜けはしない。
その翌日は扇風機を用意してきた。ながーい電源コードを引き回して、スイッチオンである。あっと言う間に紙は吹っ飛んでしまう。風情がない。もちろん思ったように木々の間を抜けないし、思ったところに着地したりはしない。男子学生はスケッチを追いかけて走り回った。

人間以外のものを、自在に動かすのは、かように、大変なのである。

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