ビデオカメラを使った実写映像の実習を担当している。撮影は授業時間内、学内が条件である。
「枠」をある程度決めておかないと、制作と言うのは上手くならない。条件がきつければ、その範囲内をいかに逆手に取るか、といったアイディアで勝負することになる。
さて、ビデオカメラを持つと、いきなり傍若無人になるタイプの学生がいる。人を止め、クルマを止め、場所を占拠し、使いっぱなし、散らかしっぱなしにするのである。こういうタイプの学生がいると、「撮影と言うのは害悪である」と受け取られかねない。
ずいぶん以前の学生だが、ちょっと目を離した隙に、傍若無人を発揮してしまったのがいた。
学内の校舎のひとつは、すべてのフロアのトイレが同位置に配置されている。窓は西向き、晴れていれば洗面所の窓から富士山が見える。2階から7階くらいまでのフロア数で、フロアが違うと窓外の風景が少しずつ違うわけだ。
学生の作品は、トイレに入った主人公が、洗面所の窓から外を見る。忘れ物に気づき、個室に戻り、また洗面所から窓外を見るとちょっと風景が違って見える。そんなことはないよね、と手を洗って顔を上げると、窓外の様子が違うようだ。はてな、という展開だ。
撮影する学生グループは、その校舎の女子トイレのすべての入り口に、こんなことを書いた紙を貼った。
「本日、授業の課題のため、撮影に使います。12時までトイレは使用しないでください」。
こちらの授業は午前中なのだが、その校舎は、さまざまな講義室や実習室が入っており、多数の学生も教員も出入りする。各フロアに一カ所しかないトイレにそのような張り紙が出て、学生も教員もびっくり仰天である。
そんな状態であれば、トイレを探して、休み時間はごった返す。使用可能なトイレは男子トイレだけである。女子は他の校舎のトイレに走る。大騒ぎになる。
張本人であるところの学生は、すべてのトイレで同時に撮影しているわけではなく、あちこちのトイレを出入りしながら撮影していた。変な張り紙がある、と誰かが施設管理者に連絡、そこから研究室に連絡が来た。スタッフに急行してもらって、撤収させた。
張本人と話をすると、撮影だから使用できると思っていた、らしい。いやそれは限度と言うものがあり、撮影だから何でもOKというわけにはいかない。研究室のスタッフと油を搾った。
学校は撮影のための施設ではないからだ。他人の迷惑、ということが想像できれば、こういう状況は回避できたはずなのだが。
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