2014年7月16日水曜日

絆創膏

うら若い女子学生もクラスにはいるので、60秒の映像で「お話」をつくると、どうしても「恋愛沙汰」というのが絡んでくる。
片思い、告白、失恋、ストーカー、いやいや、人生まだまだこれからの20そこそこの学生が考えることは、当然のように、青いものである。

「失恋して悲しい」というような映像の描写があった。女子が呆然と、キャンパスのピロティに立っている。カメラは彼女の足下のローポジションでアップ。女子学生は、ウェッジヒールのサンダルを裸足ではいている。遠景に、男子学生と女子学生の足があり、寄り添って、並んで、それが遠くに去っていく。というカットである。

女子学生のくるぶしの下に、絆創膏が貼ってある。サンダルの靴擦れでもあるのだろう。新品ではなく、数時間前に貼った、と言う感じである。

たいていの学生は、ディテールを作り込む、という経験がない。衣装や持ち道具なども、役者役の学生の「お持ち合わせ」で間に合わせる。すると、こういった「生活臭」のある絵がときどき出てくる。わざわざ絆創膏を貼って撮影したわけではなく、たまたま役者をする女子学生が靴擦れしてた、というだけ、である。

そんな絆創膏を眺めていると、「生活臭」というのが大事なんだよ、と昔、ポルノ映画を監督していた人から言われたことを思い出した。ポルノ映画は、「きれい」だけではなくて、「リアル」な感じが必要なのだそうである。だから「生活臭」というのを、そこはかとなく、匂わせるのが絵づくりのポイントなのだそうである。枕元のマグカップの模様が、観光地のロゴ入りだったり、とか。脱ぎ散らかしたセーターの袖口がちょっとほつれていたり、とか。全裸の女が、かかとに靴擦れの絆創膏だけをつけている、とか。微妙なものであるらしい。

…くだんの学生の場合は、単に「うつってしまった」だけに過ぎないのだが。

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