2014年11月5日水曜日

古典

美術畑で仕事をしていると、ときどき「古典技法」というのにぶつかることがある。
絵画で言えば、フレスコとかテンペラとかいう技法がそうだ。中世の絵画技法がそのまま伝承されている。日本で言えば、「日本画」の伝統的な技法にあたるのかもしれない。
もちろん今でも、その技法を使って絵画をつくる人はいる。マーケットとしてはさほど大きくはない。だからマスプロダクトにはならない。テンペラをしている人は、顔料という絵具の材料を買いにイタリアまで、という世界である。

絵画で言えば、古典技法と言うのはプリミティブな材料を使っていることが多い。日本では入手不可能だったり、マーケットが狭いのでやたら高価だったり、ということはあるかもしれない。
中世ヨーロッパの絵画、というのは、どちらかと言えば今では「写真屋さん」とか「イラストレーター」に近いもので、基本的には徒弟制度である。工房ごとに「企業秘密」な、絵具の調合があったりする。現在の状況と比べると面白かったりする。

そんな時代から500年近くたっても、同じような材料で同じように描くことができる、というのがびっくりでもあり、面白くもある。中学校の英語の教科書でワイエスが取り上げられていたが、古典技法でいまどきのテーマ、ということが面白いところだろうか。

機械を通して表現することを常としていると、ときどきそういった作業の作法というのがうらやましくなることがある。

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