10年以上も前の学生なのだが、自転車少年がいた。
ある朝早くに学校へ行ったら、ある男子学生が、ロードレース風のなりをして、廊下を歩いていた。ヘルメット、ぴっちりしたシャツに短パン、自転車靴。クリートカバーを忘れたのか、爪先でカッチャカッチャと音をさせて歩いている。
あまりにも美術大学にそぐわない風景なので、思わず「おおっ」と叫んだら、相手の男子学生もこっちに気付いて、えへへ、と笑った。話を聞いたら、ここ数ヶ月はそのなりで実家のある川崎から自転車通学なのだそうである。1時間半は走るので、たいてい早く来て、体育館でシャワー、着替え、授業、という作戦であるらしい。
本格的だねえ、と言ったら、にこにこ顔で「そうなんですよお。ほら」。
と、「本格的に」すね毛まで剃っていることを自慢してくれたのであった。
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