2012年6月22日金曜日

規格


映像系の作業をしていると、どうしても「機械」とつきあうことになる。
学生の頃は、動画、と言えばフィルムだったのだが、それがビデオになり、デジタルビデオになった。

最初に買ったビデオデッキはベータという規格のカセットを使用しているもので、ソニーのもの、当時は据え置きで、リモコンがケーブルで繋がっていたりした。メーカーの想定する主たる使用目的は「エアチェック」、つまり放送されている番組の録画である。
ほどなく、他のメーカーからVHSという規格のカセットを使う機械が販売された。ソニーとは違って国民的大メーカー、当然のように機械の値段を安くして「ぶつけて」くる。
その後数年は、一般家庭のシェアが次第に「安い機械」に食われつつあったが、ベータも音質や画質の良さでなかなかシェアがゼロにはならない。

一気に崩れたのが「レンタルビデオ」という商売の台頭である。
映画をビデオに収めたものを、一泊いくらで貸すもので、当初は同じタイトルの映画がベータとVHSで棚に並べられていた。大人が考えることは、まあどこでも誰でも同じようなもので、映画を家に持って帰れるのなら、ひとりでこっそり「ピンク映画」、である。こちらはなぜか圧倒的にVHSテープの使用が多かった。商売としてはハードの価格が安い方が、総体としての出費削減、売り上げ倍増である。レンタルにしろ、セル(販売される)にしろ、エッチなものを見るのは「VHS」でなければならない。見るためにはVHSのデッキを購入しなくてはならない。
というわけで、あっという間に世間はVHSビデオ一辺倒になってしまったのである。

同じ幅の磁気テープを使用しているのだが、パテント料を払いたくなくて新しい規格を作り出す、というのが、オーディオ、ビデオ関連メーカーの常である。それが普及するためには、何らかのニーズがいる。娯楽やエンターテインメントの業界では、それは文化や伝統、品質とかクオリティ、オリジナリティではなく、「ピンク」なもの、だったりするのである。

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