2012年6月15日金曜日

傾き加減

デッサンをしていると培われる、と言われているのが、構図やフレーミングのセンス、光と影のバランス感覚、なんかである。石膏デッサンでは、当然すぎることであまり言われないが、静物デッサンだと静物が台の上に鎮座ましましているか、などということを細かく注意される。りんごが机にめり込んでいたり、皿に埋まったように見えてはいけないのである。もちろん、リンゴを置いてあるので、机の天板は水平であることは暗黙の了解事項である。天板を斜めに描いてしまうと、リンゴは転げ落ちてしまうからである。

ところが、ビデオカメラで撮影する初心者は水平垂直に対してかなり無頓着である。デッサンを勉強していた学生でも、平気でピサの斜塔よりも斜めな室内といった風情の絵を撮影してくる。
「なんでこんなに床が斜めなのか」と学生に問うてみると、
「不安な気持ちを表してみました」という返事だったりする。
確かに、床が斜めなのは平衡感覚には悪いかもしれない。
「いえ、主人公が将来について不安に思っているんです」。

うーむ、過去について不安があると、床が垂直になるのだろうか。

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