2012年6月18日月曜日

不安


映像系の実習ではグループやチームで作業をすることが多い。なぜかというと、一人では手が足りないとか、目が届かないとか、そういった物理的な理由である。つまり作業の内容を見ながら、仕事を適宜分担することで、スムーズに作業が進む、はずなのである。

ビデオで撮影作業だと、カメラをのぞいて撮影する人以外に、カチンコや役者への伝達などするアシスタントの人、後ろから車や自転車が来ないか見張る人、通りがかりの人を止めたり通したりする交通整理など、いろいろ細かい作業がある。当然、カメラマンはファインダーだけをのぞいているので、後ろから自転車がやってきてもわからないし、突然通行人がレンズの前を横切ってNGを連発する羽目になる。カメラマンだけが撮影をしているわけではない、のである。

にもかかわらず、学生さんの作業を見ていると、「全員カメラマン」状態になっていることがある。役者以外が小さなカメラのモニターに群がっている。誰も、後ろから来る人間に気を遣わない。学内だとむしろ通行人の方が気を遣っていて、掃除のオジサンがほうきを抱えて「通ってください」と言われるのを待っていたりする。
全員カメラマンになる必要はないよと注意しておくと、カメラマン以外はそばのベンチでぼーっとしていたり、スマホをいじっていたりする。下手をするとちょっと離れたところで、おやつを食べていたりする。

数年前から、こういった「ぼー」状態の学生さんが増えた。いや10年以上前から、「指示待ち症候群」というタイプの学生は多かった。以前は「何をすればいいのかなー」という顔をしていたのだが、最近は「ぼー」である。
カメラマンの気持ちになって、本人の出来ない仕事を手伝うように、と注意するのだが、「人の気持ちになる」こと自体が難しくなっているのかもしれない。おうちで日曜大工や料理のお手伝いをしたり、年寄りとつきあった経験がないのだろう。やはり「おこ様」は家庭の中では「偉い」ので、人を気遣うこともないのかもしれない。

撮影現場で「ぼー」としている学生を眺めていると、なぜか「老後の不安」というコトバが脳裏をよぎる今日この頃である。

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