まあ、そうは言っても、好きでやっている作業なのだから、インクまみれだろうが、酢酸くさくなろうが、なりふりかまわなくなろうが、作業はする。
学生にとっては、「仕事の証明」でもあるし、みんなでよれよれしていれば怖くない、という状況にもなる。
そんなこともあって、なりを見れば専攻分野のだいたいのアタリがついた。
翻って今日、学生さんのなりは、均質化してきれいになった。汚れているわけではないから、それだけでは専攻分野があまり分からなくなった。肉体労働系の作業が少なくなったということでもあるのだろう。彫刻の学生だって、コンピュータで3次元のオブジェをつくってプレゼン、という時代である。彼らにとって「つくる」とは、コンピュータのリターン・キーを押すことだったりする。指先を染料で染めたり、絆創膏だらけになったり、薬品臭が髪から抜けない、などという状況は、別世界の出来事なのかもしれない。
現実的にはそういう社会になっていくのかもしれないが、それで忘れてしまうものは何もないのだろうかと、時々不安になることがある。
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