2012年6月14日木曜日

美術室

たいてい高校の美術室には石膏像が並んでいたりする。卒業アルバムなんかで見る美術部の活動と言えば、定番は石膏デッサンをしている写真である。

石膏像にもいろいろとグレードがあって、値段は同じではない。同じ像であっても製造しているメーカーによって値段が違っていたりする。同じメーカーでも型がくたびれてくると、エッジが甘いのが出来上がり、それは多少安くなるのである。
大学受験の勉強で描かされる石膏像は、胸像より大きいものが多いので、それなりなお値段になる。インテリアにするにはちょいと大きなサイズでもある。たいていの学生にとっては高額なので、自分で購入など思いもよらない。しかも、受験用にはさまざまな像を「練習」しておかなくてはならない。であるから、予備校でひたすらさまざまな像をデッサンする。

同居人は、美術を通信教育で習っていたので、そこそこデッサンには苦労をしたらしい。初めて家に行ったときは、本棚の上にどーんと、エッジの甘い「あばたのビーナス」が鎮座ましましていた。どうもその頃、通信教育の講座の方針で、首像を買わせて、自宅で何枚も描かせていたようである。うーむ、首と言えども実物大、人間の首よりも大きいし、台座もある。しかし、通信教育を終了しても毎日あばたのビーナスを描くか、と言えばそうでもないご様子。

結局、同居人の引っ越しをきっかけに、知り合いの勤務する学校の美術室にビーナスさんもお引っ越しいただいた。
こういうわけで、同居人の石膏は、美術室に並ぶことになったのであった。

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