2012年2月20日月曜日

肉体


今も昔も学生はアルバイトをする。
上級生ともなると自分の作品制作に費用がかかるようになってくる。お金がなければ材料は買えないし、お金をつくっていると時間がなくなる。
そのため、夏休みや冬休みに集中的に稼ぐとか、割の良いバイトを探すことが多い。

私の頃の「割の良いバイト」は、もちろん「日雇い労働」である。ただし男子限定だったので聞いた話だ。
朝早く、高田馬場や新宿の駅の近くの公園にいると、大勢がたむろしている。そこへ、作業服を着たオジサンがやってくる。ちょっと肩を叩いて、仕事の内容を打ち合わせ、双方確認できたら、近くに停車しているマイクロバスとかワゴンに乗るように言われる。所定の人数が集まったら、その車は本日の作業場所へ出発。作業終了後はまたその車で、拾われた公園に戻され、封筒に入れた現金を支払われる、というものだった。
肩を叩くオジサン、というのが公園に来て人集めをするのだが、毎日来るわけではない。その一方で、何人かの違うオジサンが来ることもある。連れて行く人数もその日によってまちまち。
契約や保険もあったものじゃないが、ともかく学生にとってはえらくいい日当なので、翌週その男子学生は友だちを誘って公園に行った。その日は、連れだけが肩を叩かれて、連れて行った本人はあぶれてしまったらしい。
オジサンが肩を叩いて、というのがミソだった。並んだ順番とか、くじびきするとかいうのではなく、その日の肉体労働に耐えられる人材をそこはかとなく選んでいるらしい、と彼は気付いた。

連れはアメフト部の所属、彫刻科の「いかにも」ごっつい学生だったからである。

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