美術学校の入学試験は長かった。
1人の学生が長くて3日、短くても2日は試験を受ける。
学校は大きくはないし、アトリエの数も多すぎる、というわけでもないから、受験生が多ければ会場をローテーションで使うしかない。
学科試験で大人数の学生を受け入れなくてはならない日は、体育館で受験、ということもあった。暖房設備もないので、夜中から灯油ストーブを運び込み、がんがん焚いた。
入試期間中は基本的に「寒い」。学校は郊外にあるので、都心から2-3度は低くなる。期間中に雪が降った年があった。朝から雲行きが怪しく、昼過ぎから降り始め、午後には本降り、試験監督達が解散する夕方にはそれなりに積もり始め、入試本部の本日の作業終了午後8時過ぎには、バスがチェーンをつけて走り、駅まで歩くのも難儀な状況で、タクシーが全くつかまらなくなった。
しかし、である。施設設備方の裏方さんは、明日の試験のために雪かきをしなくてはならない。関東南部では久しぶりの「大雪」で、用意していた雪かきスコップの絶対数が足りない。人海戦術でも、相当の労働量になる。明朝相当早くから出勤して肉体労働となった。
担当していた事務職員はそれがいやだったのだろう。翌年の入試期間中は、施設管理の事務局前に、どーんと、ぴかぴかで新品の小さい除雪車が数台並んでスタンバイしていた。
入試期間中に積雪することは私が業務をしていた間には二度となかった。もちろん、除雪車の稼働を見ることもなかった。その数年後には除雪車がスタンバイすることも、なくなった。あの除雪車はどうなったのだろうと、2月に雪が降ると思い出す。
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