いきもの、なまもの、天気は、自由にならない、とは学生時代によく言われたことである。
被写体として、人間以外の生きもの、天気に左右される撮影計画は、なるべく避けろ、と言われた。
当時習っていたのは、日活で映画監督をしていた人で、製作の苦労談など時折聞いた。
『豚と軍艦』の助監に入っていて、豚のシーンで苦労したことを聞かされた。
その後、日活という会社がロマンポルノ製作に舵を切った。製作費は当時、1本5より上にはならない数百万。安く仕上げるには、準備も撮影も編集も早く済ませる、キャストもスタッフも人件費を抑えることが肝要である。撮影は1日いくらの勘定だからである。そんな状態で脚本家はシナリオに「部屋を開けたら真っ黒い蝿の群れが」という文を書いてきたらしい。低予算の映画なのに、準備は恐ろしく大変だったのよ、とその後見学に連れて行ってもらったスタジオのスタッフから聞かされた。蝿を集めるのに費用はかけられない、だからみんなで手分けして夜な夜な蝿を捕獲していたらしい。
黒澤明の天気待ち、というのは有名な話である。晴れるまで待とうホトトギス、とは待つことに費用がかからない人が言うことである。スタッフキャストもエキストラも、待つ間にアゴアシマクラの経費はかかる。機材はレンタルだから、もちろん動いていなくても経費はかかる。黒澤監督だからこそ、会社は待っていても1日数百万円の費用を出すのであって、新米監督やポルノなどではそんな悠長なことは言えない。
映画を見ていて、いきものを使うシーンを見る都度、豚と蝿の話を思い出す。
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