2012年7月12日木曜日

もぐら


新宿までバス15分というところから、東京と埼玉の県境の郊外へ引っ越して10年ちょっとになる。
生まれは名古屋だが、新宿育ちの同居人にとって「郊外暮らし」は初めてのことだそうなので、生活環境についてのリアクションがいちいち「都会人」らしかった。

歩いて5分ほどのところに、米軍の通信基地、というのがある。基地と言っても、軍用トラックやヘリが始終出入りしているわけでも無し、近所に兵隊さんたちがうろうろしているわけでもなし、だだっ広い原っぱに、ヘリポートと簡易型象の檻、といった風情の設備があるだけである。
引っ越したのは春先で、原っぱに土の塊がそこらじゅうに盛り上がっている。同居人はそれがなんだか分からなかったようで、夜中に誰かが土を掘り返しているのかと思っていたそうだ。誰が何のために掘り返しているんだろう、などとぶつぶつと言っているので、あれはもぐらなんだけど、と教えた。
新宿の真ん中には、さすがにもぐらは出ないのだろう。

以来その基地沿いの通りは、同居人と私の間で「モグラ通り」と命名された。

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