2015年4月15日水曜日

テーマ

現在は、背広は紳士服屋で大量に吊るされて売られている。サイズの合いそうなものを選んで、微調整してもらう程度で購入である。

今はほとんど見かけなくなったが、私が子どもの頃は町にたいてい「テーラー」というのがあった。洋服の仕立て屋さんである。採寸して、オーダーして、仮縫いが出来上がったら連絡が来る。仮縫いを試着して、仕上がり具合の詳細を打ち合わせて、本縫いにかかってもらう。
手間もお金もかかるものだった。その一方で、好みに合わせていろいろなオーダーができる。ボタンの色や形、位置など、選ばせてくれる。

研究室でお世話になった先生は、銀座の某有名「テーラー」でお誂えである。まあ、基準体型ではない「寸法」の持ち主ではあったのだが。
さて、背広にはオーダーするときにそれぞれの「テーマ」があった。お気に入りは「マフィアスーツ」。黒地に銀の細いピンストライプの入った生地でダブル、裏地は真紅である。もちろん好きな映画はコッポラの「ゴッドファーザー」である。他にも、何気ないグレーのスーツだが、裏地は派手なプリント柄で「江戸っ子なスーツ」。好きな色が「紫」だったので、裏地がその色だと「紫の君のスーツ」。裏地に凝るのがお好きだった。

すでにあの世の人なのだが、向こうではどんなスーツを誂えているのだろう。

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