2014年3月1日土曜日

記憶

携帯電話を使うようになって、もうずいぶんになる。

たまたま出先でバッテリーが切れた。連絡をする必要があるので、公衆電話を探す。……公衆電話がない。電話ボックス、というのもなければ、喫茶店の入り口にあるピンク電話、というのもない。数年前の震災のときに、携帯電話がつながらず公衆電話に長蛇の列、というのが話題になったが、だからといって「公衆電話保存運動」をしているフシもない。
やっと見つけた電話は、テレフォンカード仕様である。硬貨使用不可なので、あわてて財布の中を探る。テレフォンカードというのは、ひところノベルティグッズとしてよくあちこちでもらったりしたものだが、いまや「不要の長物」となっている。たまったカードは電話料の支払いにも使えたのだが、今や家庭の電話回線も「旧電電公社」ではない。
さて、電話をかけようと思ってはたと気づく。電話番号は、携帯電話のメモリー内である。相手の名前を検索して「電話をかける」ボタンを押すわけだから、数字を覚えていないのである。
携帯電話以前は、10や20の、よく電話をかける相手先の番号ぐらいそらんじていたものだ。

結局、どこにも電話をかけられないことに気づき、連絡はあきらめることになった。世の中は便利になったのか、不便になったのか、よく分からない。

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