2014年3月5日水曜日

体型

3月にもなると、勤務校の入学試験関係のイベントはほぼ終わる。4月になると、晴れて1年生が授業にやってくる。

さて、美術学校というのは実技授業が中心である。
私の時代の彫刻科は、特に肉体労働派のガテン系である。具象系、抽象系と大まかに表現ジャンルを分けて指導されていたが、どちらにせよ大きな丸太とか石とか鉄、人と同じボリュームの石膏や油土が相手である。必然的に男子学生が多かったが、中には女子学生もいた。もちろん、女子だからといって特別扱いはされない。丸太を切るためのチェーンソーを他人に任せたら、自分の作品にはならない。
楚々とした女子学生の多かった日本画でも、最終的な卒業制作はかなりの大きさである。大きいからと言って、他人に作業してもらうわけにはいかない。大きな絵を描くにも、それなりの筋力は必要である。

当然のように、私の関わる映像系の作業でも体力は必要である。機材をかついで走ったり、階段を駆け上がることは「普通」である。私が卒業した頃、テレビ局のカメラマンは体重100キロが基準だった。100キロ以下は、いくら才能と情熱があってもカメラクルーとしては不採用である。単なるデブでは、もちろん駄目である。100キロの体型、というのはアメフトとかラガーマンとかの、ごっつい筋肉体育会系である。
現在のENG機材というのは、技術進歩もあって軽量化されてはいるが、それなりの体力や持久力は必要だ。

ところが授業を始めてみると、意外に学生の体力がないことにびっくりすることがある。すぐに座り込む、ワンフロアの移動にエレベーターを使う、10キロもないカメラケースを学内で運ぶのに台車を借りに来る、すぐに休憩モードに入る。女子学生だけではない。男子学生である。

絵を描くことは苦手だが、肉体労働どんとこい、という人材の方が、現場ではいいよねえ、とよくティーチングアシスタントと話したりする。ぜひ入学試験に体力テストを、とここ十数年つぶやいたりしているのだが、実現しそうにはない。

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