2014年3月3日月曜日

コンプレックス

2月も終わりに近くなると、勤務校の入学試験はようやく終わる。

夏休みから専任の教員と職員は「地方巡業」のように、各地で行われる「大学入試説明会」にご出張である。
私が学生の頃は、美術大学と言えば10本の指で足りたものだが、今や全国各地に美術大学が出来るようになった。美術やりたいから東京に行く、というのは、上京するための半ば言い訳だったりしたのに、美術大学なら地元にあるから地元に行きなさい、という今日この頃である。ご両親からすれば、高い物価の東京の下宿生活は物入りなので、近くの方がリーズナブルに見えるわけだ。
もちろん日本全国人口分布から言えば、18歳人口は減少の一途なので、美術学校増える、子ども減る、ということは目に見えている。学校経営側としては、黙っていても受験生はやってくる時代ではなくなった。AO入試、推薦、センター試験利用など、手を替え品を替えて、入学試験のバリエーションを増やすことで、志願者を増やす作戦をとった。

どうなるか、というと、美術学校に入るのに実技試験を受けなくても大丈夫、という状況が発生した。
ある意味では、入学試験を受けるための敷居を低くしたわけである。美大専門受験予備校で3年みっちり石膏デッサン、という人生修行は不要になる、ということだ。
一方で、美大生のくせに絵を描けない、という矛盾な状況が発生する。世間一般では、美術学校を出たのだから絵が描けて当たり前、という認識がある。矛盾に頭を抱えるのは当の本人なのだが、そもそも絵を描くという状況そのものがない人生だったので、いきなり絵を描くのが好き、ましてや得意、にはならない。

一般大学での基礎教育の拡充がよく話題になるが、美術学校でも同様な問題はあるわけだ。

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