2012年12月2日日曜日

顔色

10年以上前の話になるが、カラー写真のプリント機材を授業で導入するにあたって、スタッフが何人かでメーカーに研修に行ったことがある。
こういうことは、ごくたまにあったりする。機械の運転とか、維持管理の研修に行ったり、技術者に来てもらったりする。

カラープリントの研修は、フィルムメーカーのラボで行われた。手ぶらでいいですよ、と言われたので、エプロンと手拭いくらいが持参品である。
ラボで研修用にネガが用意され、そのプリントの実習である。引き伸ばし機のコントロールと、現像機の取り扱い、現像液の扱い方、なんかをやりながら、最終的に「きちんとしたプリントを出す」ということだった。
渡されたネガは中判で、「結婚式の記念写真」が数パターン。学校は美術系なのでどちらかというとアートな写真はよく見るが、いわゆる写真館の写真はあまり我々の目には入らない。新鮮である。一方で、手焼きで大きく伸ばすようなカラープリントは、こういった写真が大きなマーケットである、ということなのだろう。
色のコントロールをいろいろつけながらテストプリントを出して、最終的に大きな1枚を出す。もちろん数名で研修に行っているので、出来たプリントはそれぞれに違ってくる。面白かったのは、「結婚式」が研修のネタだった理由だ。白いドレスはあくまでも白く、打ち掛けの赤は鮮やかに赤く、しかも花嫁さんの顔色はすばらしくいい顔色にならなくてはならない。微妙である。ドレスを白くしようとすると、嫁さんの顔色が青みがかってきたりする。打ち掛けを赤くすると、綿帽子が白くなくなる、といった具合である。嫁さんの顔色も、数名いれば、すこしずつ違う。焼いている最中は結果が見えないので、現像機から出てきて一喜一憂である。こういった写真だと「正解」があるので、伸ばしの技術に対するジャッジがしやすい、というのもサンプルネガの選択理由だ。

普段、アートとして写真をやっている先生が、花嫁写真を伸ばしているのも、少し不思議な風景だったりした。

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