2012年12月17日月曜日

それなり

景気が悪くなると、芸術系の学校の入学志望男子が激減する。大学の就職先のリストには、東証一部上場の大企業の名前が少ない。世間様一般の「安泰就職先」は、芸術系出身では縁がない。
だから、「大学を卒業して、いい会社に就職」を目指す男子保護者は、「いい会社に就職」できそうな大学に出資、つまり学費を出すのである。

この時期の大学受験ご相談などの様子をきいていると、あの学校のデザイン科の方が就職がよさそう、などという話が出てくる。
確かに、「就職がよさそう」に見える資料であったりする。
たとえば、就職率80パーセント、などと資料に大きく文字が躍っていたりする。それは、就職を希望する学生の8割が就職できると言うことである。しかし、全学生が就職を希望するわけではない。
たとえば、全学生の6割が就職を希望したとして、その8割が就職できた、つまり全体の4割8分が就職する、という図式である。たとえばの例で言えば、あとの半分以上は何か。「進学希望」が最近は多い。私の頃と違って、大学院卒業にも求人は来るし、大学院も募集が増えたので、モラトリアム継続はかなり楽な選択である。次に多いのは「フリーランス」希望で、よく言えば「作家生活」、悪く言えば「ぷう」である。
もうひとつの落とし穴は、就職率は卒業時の数字である、ということである。卒業してからの離職や転職は、大学の資料として数字には出てこない。就職できた4割8分が、2年後3年後に同じ職場にいるとは限らない。4割8分よりも、もう少し分が悪くなってくるケースも考えられる。

こういった学校に、就職するために行くのは少し早計かと思うことがあったりする。父兄の皆様、ごめんなさい。でもだからこそ、美術学校出身の学生は最初から多くを望まないし、それなりに生き抜く術を身につけるのである。

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