2012年12月11日火曜日

コスト

以前受け持っていた学生で、ちょっと小柄な男子学生がいた。

地方出身の浪人組である。こういった学生は、浪人時代をどこで過ごすのかによって、ずいぶんと気質が変わることがある。
彼の場合は、都心の予備校で下宿浪人、つまり朝から晩まで予備校漬けである。地方出身の素朴な学生は、都心の水で磨かれ(?)たりなどして、悪いことも少し覚えたり、親元を離れて解放感からかやってみたいことをやってみようとしたりする。ただし、浪人時代はそれなりに目の前に目標がぶらさがっていたりするので、そうそう羽目は外せない。だから入学したらとたんに「はじける」ことがある。

彼の場合の「はじけかた」は、ヘアスタイルだった。
朴訥な典型的地方出身者だったのだが、5月になったら、彼のあたまは「金色」になった。
おお、大胆だなあと思っていたら、6月になったらピンク色になっていた。
ほおお、派手だなあと思っていたら、7月になってオレンジ色になった。
いやあ夏らしく、元気のいい色だなあと思って、9月の新学期にはメタリックなシルバーで登校してきた。
彼は毎月のように髪の色を変えてきた。派手な色は、教室内でもよく目立つ。欠席するととてもよく目立つ。
「おお、今日は紫色が見えないねえ」。

学年末になり、春休み間際に会った彼の頭は、ツートンカラーだった。頭頂部だけ黒くて、毛先側は黄緑色、しかもばさばさに乾燥しているのか枝毛だらけである。おお、新しい作戦だねえ、と声をかけると、彼はもじもじしている。どうも、もう髪を染めるための小遣いが「手元不如意」のようであった。

ヘアファッションには、それなりにコストがかかっていたのである。

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