2016年7月4日月曜日

ブーム

現在担当しているクラスの学生は概ね同い年、離れていても2−3歳くらいである。生活環境があまり変わらなければ、受け取っている情報もそうそうは変わらない。実技実習なので、作品をつくるためのアイディアやネタだし、と言う作業は、どうしても似たり寄ったりになってしまう。1−2年のスパンでは変わりはないような気がするが、3−4年程度の幅を考えれば、確かに「傾向」というのがある。作品のアイディアやネタというものは、真っ白なアタマの中から、忽然とわき出すものではなく、彼らが生活していた環境で得たものに根ざすからだ。

この授業を始めた頃の「流行り」は、「世にも奇妙な物語」だった。テレビで良く見ていたのだろう。視聴率も高い、単発のシリーズものだ。現実の世界とはちょっと違う世界のエピソードを語る、という方式である。だから例えば、「人は必ず後ろ向きに歩く」とか、「何かの合図で誰かがどうにかなる」といった設定があって、その上のエピソードが語られる。それを子ども時代に見ていた学生さんたちは、それをやってみたいものらしかった。類似の企画案がたくさん出てきた。「猫が先生をしている学校」「誰かがヘッドフォンで音楽を聴くと全員が踊り出す」「家を出るときに右足から出ないと不幸なことがおこる」といったものだ。
ところが、作品は90秒程度の尺が条件である。エピソードを描くためには、その前提となる「世界観」を最初に伝えなくてはならない。結局、世界の設定を描写して時間切れ、そうでなければ「この学校の先生は猫なんです」などとナレーションを入れることになる。なんで猫なんだ、と考える間もなくエピソードが始まってしまい、犬は生徒にはなれないのかなどと思っていると尺が終わってしまう。気にしているとストーリーの展開が追えない。

現実世界とは違う世界を描くのがその頃の「ブーム」、つまるところ、世界観の設定を説明しておしまい、である。 

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