2013年1月4日金曜日

すし


同居人が小学校6年生担任だった頃の話である。6年担当というのは、授業以外の仕事がかなり多い。卒業にかかるイベントや作業が同時にかぶってくるからである。しかもそれは年末年始を挟んだ作業になったりする。

6年生の恒例と言えば、卒業文集に卒業アルバムである。原稿や写真を集めたり整理したり、といった細かい作業はもとより、編集なんかも子どもが中心になって作業する。中心になって作業した、といった実感が大切なのかもしれないが、フォローは先生たちの作業である。

その学年は、卒業アルバムに個人ページをつくる、という編集計画を立てた。絵画やお習字、自分の写真なんかを並べるわけである。個人写真は、まあ普通であればバストサイズ、正面、いわゆる「証明写真」になるケースが多いのだが、その学年は「コスプレ」をすることになった。「将来の自分像」というわけである。
撮影された写真の整理を手伝っていたのだが、子どもなりにいろいろと工夫してコスプレするのである。なりたい職業、というのがコスプレのキーワードになっていたようで、白衣着てバインダー持って「お医者さん」とか、ベレー帽でスモック着て「画家」なんかがあったりする。仕分けしていて面白かったのは、女子の多くは昔も今もあまり変わらないことだ。医者とか薬剤師、なんていうのはたいてい親がそういう商売をしていて、そうでなければ「アイドル歌手」とか「お菓子屋さん(今風にパティスリー、なんてキャプションがついていたりするが)」「パン屋さん」「漫画家」「バレリーナ」「バイオリニスト」「小学校の先生」なんかが並んでいたりする。色気より食い気、習い事や特技で身を立てようとするのは、女子にありがちなのかもしれない。一方男子の方はと言えば、「テニスの選手(その頃テニス漫画が流行っていた)」「サッカー選手」がぽちぽち、しかし目立つのはネクタイしめて「一流企業のサラリーマン」「国家公務員」「地方公務員」「法務関係」などのキャプションが多いことだった。「宇宙飛行士」や「ノーベル賞受賞の科学者」をやっていたのは男子ではなく女子である。プロスポーツ選手も総体として少ないし、現実的な将来像ではあるが、何だかなあ、という気がした。

やたらぽっちゃりしている男子で「すし屋」というのがいた。鮨屋のセガレではなく、サラリーマンのご家庭だそうである。少しホッとした。

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