2016年1月9日土曜日

ファン

さて、現在は、自分の家ではなく、著名人や文士の墓を探して参ることが、ある種のブームらしい。そのようにして歩く人を、「墓マイラー」というのだそうだ。
東京の街歩きを授業でやっているので、数年に1件ほど、墓関係のコンテンツを考えつく学生がいる。ただし、たいていの場合は元文学少年や少女である。

勤務校の近くには玉川上水がある。玉川上水と言えば、太宰の心中。現場は、もう少し下流、である。私の学生の頃は水を通していなかったので、ずいぶんと深い「谷」だったのだが、当時は水量もあっただろうし、流れもそれなりにあったのだろう。太宰の命日、桜桃忌の頃には、三鷹のお寺に参るファンが多い。
以前受け持っていた学生も太宰好きだった。授業ネタにしようと、写真を持って来た。「太宰の墓なんです。見つけました!」と勢い込んでいる。ファンならばたいてい知っている場所だし、秘密の場所でもないので、見つけるのはあまり苦労しないはずだ。ただ、学生にとって墓参りというのはあまりしたことがないらしく、墓地そのものも面白かったようだ。彼女の写真を見ると、太宰の墓以外の墓石もいくつかある。「面白いでしょう」、と本人はいたく得意である。「昔の人の墓はナントカ家ではなく、個人名なんですねえ」。まあそういうのも、ある。「面白い名字もありましたー。ほらこれ、しんりん、たろう、の墓。しんりんさん、て名前、聞いたことないですー」。

…彼女は「太宰だけファン」であったようだ。 

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