2013年3月8日金曜日

差し入れ


記録の仕事をしている美術館のワークショップ、春の講座は「写真」がテーマである。
講座の一つは、「銀塩写真」、モノクロのフィルム現像、コンタクトシート作成、伸ばし、である。
1日4時間×3日間なので、「体験教室」という感じ、である。美術館には暗室がないのでにわか暗室をつくるところからはじまる。
それでも参加者のうち、若い方の人は「物心ついたときからデジタル写真」世代だし、もう少し上の年齢でも「カメラ屋さんにおまかせ同時プリント」な世代である。

デジタル写真、というものに「写真のシステム」が本格的に移行し始めたのが、15年ほど前になるだろうか。それまでは、写真と言えばモノクロ写真、暗室作業はグラフィックデザインをやる人にとっては必須作業だった。
わけも分からず、データ取りと反復練習に励み、夜間の風呂場とトイレを占拠してフィルム現像、押し入れにこもって引き伸ばし、暗い作業である。
冬になると夜中は寒いだろうと家人が石油ストーブを差し入れてくれてしまい、ストーブの火で印画紙がかぶってしまった。ありがたいけど、作業ができないから、石油ストーブはやめてね、と言ったら、次の日はファンヒーターを差し入れてくれてしまい、乾燥のためにぶる下げていた印画紙やフィルムがホコリだらけ傷だらけになってしまったりした。

デジタル世代には笑い話にも思えないかもしれないが、写真というのは面倒くさい作業だったのである。

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