さて、足の次は頭の上である。
高齢者くらいの世代だと、帽子、というのは「洋服」の一部だったりした。背広に帽子をかぶって会社に行くし、女性は服をオーダーするときに共布で帽子をつくる、ということもよくあった。洋服ダンスの上には帽子の丸い箱が積んであったりした。
服装だから、帽子のマナーというのがある。葬式や国歌斉唱、お寺や教会は脱ぐ、女性のつばなし帽子は正装の一部、など、文化や民族宗教によって少しずつ違う。私くらいの世代だと、細かいところまでは分からないが、基本的には室内では脱いでおいた方が無難、くらいを親から教わった。
いまどきの学生さんだと、授業中にも関わらず野球帽をかぶりっぱなし、というのがいる。ずいぶん前のハナシだが、教室内で帽子をかぶっている学生を見たら、その学生が帽子を脱ぐまで授業を始めない、という高齢の先生がいた。帽子をかぶるという場所や機会が少なかったり、家族にそういう習慣がなかったり、中学高校で制帽がなかったりすると、マナーというのがあまり浸透しなくなるんだなあと思った。
20年近く前になるが、野球帽をかぶって授業に出ている学生がいても注意をしない、という先生がいた。そうそうお若い先生でもなかったのだが、気にならないかと、別の機会に聞いたことがある。その先生は、以前講演会で帽子をかぶったまま着席している女性を注意したことがあったそうである。その女性は、がん治療の最中だったのだそうだ。それ以来、着帽をマナー違反だと知ってはいるが、注意できなくなったのだそうである。
野球帽をかぶっている学生はがん治療中ではないだろうが、注意しないことによって、室内で脱帽というマナーを知らないまま卒業していった。
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