2012年10月11日木曜日

苦手


学校のカリキュラムには「選択」という科目がある。
私が担当しているのは実技科目なので、講義ばかりではなく、とにかく働く、という作業が続く。
美術学校の学生は得てして、講義は苦手だが、ガテン系なら大丈夫、なはずなのだが、ここ数年様子が違うのに驚くことがある。

美術学校の受験にはたいがい「実技科目」というのがあった。美術系ならデッサンは必須、デザイン系なら平面構成も必須である。美術予備校のご指導は、デッサンやデザインの成績と志望大学の志望科目とのすりあわせである。
ところがここしばらく、美術学校の入学試験に実技科目が必須ではないコースがいくつか出現している。デッサンや構成などの実技試験の代わりに、論文や簡単な描画テストといったものである。
受験生から見ると、受験用のデッサンやデザインの勉強は、高校美術の習得とは違ったベクトルなので、別途予備校やら受験教室やらの受講が必要だ。ところがそれがないとなれば、高校の勉強だけで受験して合格することも出来るわけだ。
かくして、「美術学校に来たが、デッサンを描いたことがない」あるいは、「美術学校に通いながら絵を描くことが苦手」な学生が続出する。
そうなると、なぜか撮影の実習で、「建物の壁面は垂直にしないといけませんよー」とか、「人物の顔を撮影するときは、顔の向きに余白を多く取るんですよ-」とか、デッサンの初歩みたいな話をしなくてはならないのである。

彼らにとって「作品をつくる」こととは、答案用紙のマス目を埋めることだったりするのである。あげくに「私、デッサンやったことがないんです」が免罪符である。ガテン系よりも、講義を聞いて、レポートを書くことの方が得意そうである。

いやいや、世間様は概ね「美術学校出身なんだから、絵は描けるもんだ」と思っていたりするんだけどねえ。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

昔、某大手企画部の友人から「今、ここでオレオ(あの甘いチョコクッキー)12枚のってる大皿『斜めに』描いて!」と頼まれ。凄まじい出来でしたが、「イイ、これでイイ、さすが美術出身!」と言われ。
ひとこと言わせて、「日本画に『斜め』はナ-イッ!!」
師匠の千波先生は、いまだに桜の花びら正面からしか描きませーん!(笑)