2014年5月10日土曜日

口伝

今は昔、私が学生だった頃はインターネットもなかったので、講義科目は「講義ガイダンス」のような冊子で配布されていた。
授業科目と担当者、内容の概要が数行あって、実際の開設期間や授業曜日など詳細は教務課が配布する時間割で確認する。概要もざっくばらんとしたものなので、詳細は先輩を捜して聞く。多分に主観も混ざっているが、面白さ加減、単位が取りやすいとか、出席が甘い、とか、別の情報も収集する。

実際に出席して授業を受けると「ガイダンスと内容は違うなあ」ということが時々あった。「近代デザイン史」という授業は、「ヨーロッパ近代のデザインについて」云々という文章だったような記憶があるが、実際には通年かけて「ウィリアム・モリス」のことをみっちりと語られた。その先生にとっては「近代デザイン」イコール「ウィリアム・モリス」だったのだろう。ちょっと当てが外れたが、それなりに面白かった。困ったのは、インテリアショップやホテルの壁紙やカーテンの柄をじーっと眺めて「モリスだねー」と思ってしまうことである。習い性というやつだ。

名物授業、というのもいくつかあった。私の頃では心理学、経済学、生物学、建築史、などがその筆頭だ。ここに入学したなら取らねば、と先輩に教えられ、また後輩に教えていった。
授業にはファンがいて、美術学校なのに、なぜか「経済学ゼミ」「生物ゼミ」という「サークル活動」があったりした。

今でもそういう「口伝」があるのだろうか。

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