都内の美術館で、教育普及活動の記録撮影とドキュメンテーションの作成、アーカイブの作業をやっている。
美術、と言えば、門外の人には「ひとつのジャンル」だが、中の人にとってはとてつもなく細分化されたジャンルがあったりする。
春の講座は、絵具とメディウムのお話である。美術学校で言えば、絵画材料とか絵画組成、とかいうジャンルになる。これはこれで、細かく見ていくとマニアックで、面白い。
講師は絵具のメーカーの開発をしていた人だが、戦後は「誰にでも使えるもの」を、最近は「プロが使えるもの」を目指すようになった、という話があった。例えば、チューブに入れた絵具は「誰でも使える」ものだが、顔料や各種の油や樹脂という「原料」に近いものは「誰にでも簡単に使える」ものではない。しかし、最近は製品として扱っているわけだ。
日本画をやる人なら、「ふつー」なのかもしれない。小学校で水彩絵具のセットを買い、油絵具のセットを買い、ポスターカラーのセットを買い、という状況だったので、同じ顔料を違うメディウムで溶けば、水彩絵具にも油絵具にもアクリル絵の具にもなることが、最初はとても新鮮な驚きだった。
小学校からこのかた、絵具は画材屋さんで買う「工業製品」だった。図工でも美術でも、描画や鑑賞はやったが、「材料」は教わらなかった。今ではそうではないのかもしれないが。
材料は歴史と化学で変わっていく。もし、小さなうちに「材料」について教わる機会があれば、もっと考え方や世界が広がっていたかもしれない。
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