上手くいかなかった授業というのがいくつかある。もちろん学生だけの問題ではないし、教える側だけの問題でもない。いくつかの複合要因があって、最終的なフィニッシュに持っていけなかったこともある。
映像に関わる作業は、基本的には共同作業である。何人かが集まって、作業を分担する。ただし、ディレクター、というのが必ず必要で、作業についてのコントロールと、フィニッシュのイメージを管理する。
以前のセクションは商業系のグラフィックデザインの研究室だ。そこで行われていた映像系の授業は、選択制だった。選択した全員で1本の作品を制作する、という授業内容だった。
こういった方法では、選択人数が授業内容を左右する。その年までは、10-15人前後が選択していたが、ある年、2人しか選択者がいない年があった。
ちょうどバブルの絶頂期で、卒業生は完全な売り手市場である。学生はほぼ全員が「大手」に「就職」することに目が向いた。例えば、メーカーの宣伝部、広告代理店などである。映像系、例えば映画会社やテレビ局の就職口は、どちらかと言えば「舞台美術」に近い人を要求する。それは担当している授業で教える内容ではない。もちろんコマーシャルフィルムをやりたい学生もいるわけだ。しかしそれも「宣伝」方面のお仕事になるので、コマーシャルをやりたければ、大手広告代理店か、制作会社を狙う。そこで要求されるのは「宣伝」についてのセンスなので、学生は「宣伝」系の授業を選択するようになる。かくして、映像系の授業の選択学生は2名、という結果になった。
当然のことだが、想定されていたシラバス通りの授業の進行は難しくなるわけだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿