2017年6月14日水曜日

煎餅屋

学生さんと話をしていると、世の中は「自分たち世代」しかいない、という感じがすることが多い。流行の歌や番組など、「知っていてしかるべき」という前提で話をする。他の世代は「世の中に存在しない」というのが彼らの常識である。
さて、2年生の授業ではフィールドワークを含めて作業をする。学外に放り出すと、いろいろなものを見るし、さまざまな人と関わる。そして自分たちの視野の狭さを知る。ただし、「自分たち世代しかいない」と思っている学生さんは、視野の狭さを知るのにすごく時間がかかる。ところが1学年に数名ほど、早い時期に、視野がものすごーく広がる学生さんがいる。こういう学生さんは、フィールドで他人のお話を聞くのが上手である。決まった傾向があって、他人、といっても年寄り、にである。ニコニコと挨拶をして、おしゃべりをするのが上手い。あげくに、あめ玉をもらったり、缶コーヒーを買ってもらっていたりする。
こういうタイプを、授業内用語で「年寄り転がし」と言っている。
ある学年で、地味な女子学生がいた。小柄で声が小さく、引っ込みがち、目立たない学生である。ところがフィールドワークをすると、年寄りとおしゃべりするのがえらく上手い。一気に「デビュー」、クラスで注目の的、である。よく聞いてみると、実家が草加市で煎餅屋をやっており、兄が跡取りとして修行中、妹の彼女は売り子の看板娘、なのだそうだ。どうりで、年寄り扱いが上手いわけだった。

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