2017年6月10日土曜日

ベクトル

写真の先生と少し立ち話をしていた。最近の学生さんは−、というのがマクラである。
写真の先生がここ数年がっくりしていることがあるそうだ。授業時に、褒めた学生さんが、しばらくして「写真を見てください」とやってくる。見せてくれたのは「鎌倉に遊びに行ってきました」な感じの、記念写真だったそうだ。
そういえばなあ、と自分の授業も思い起こす。私の方は実写のビデオを担当しているのだが、そちらもここ数年「ホームムービー」風な作風が目立つからである。
それが意図してか意図していないかはよく分からなかったのだが、最近の学生さんはスマホで動画、インスタグラムなどのSNSで公開、というフローが多い。小学生の「憧れの職業」に「You Tuber」が入っている。初期のそれはかなり計算されて台本が書かれているように見えるのだが、表面上は「お気楽ムービー」に仕上げている印象がある。それに騙されているのか、本質を読み込めないのか、動画作成は「軽いノリ」で「稼げる」と思っているのかもしれない。やたらカメラを振り回す、ピントも露出も関係なし、表現の特性や特長も理解しない、とりあえず機材をいじり倒す、という印象である。
ビデオカメラや編集ソフトの宣伝コピーを眺めると、「プロ級の仕上がり」「ハイクオリティ」「最高画質」なのが多い。決して、「作り手のコンセプト」などには立ち入らない。
写真で言えば、ライカを持っていてもアマチュアはアマチュア、「写ルンです」で作品を制作するプロ。ホームムービーを否定するわけではないが、美術の畑で作品を制作するのであれば、少しベクトルが違うような気がする。

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