2016年6月1日水曜日

定番

映像系の実習授業を担当している。実習、なので、学生がそれぞれ作品制作をする。お題があって、それについてそれぞれが作品を制作するという、美術学校方式である。実習には「正解」はない。それぞれがじたばたしながら作品をつくる、ということになる。基本的には個人制作になる。授業はそれぞれのケースに応じて対応しながら実習指導する、というかたちである。会話をしていると、どうしても「サンプル」になるような事例を挙げることになる。
以前は「誰でも知っているような」テレビ番組やドラマ、映画があり、あんな感じの、という会話が成立した。ところがここ数年は、なかなかそういう会話にならなくなった。
インターネットが生活に入り込むようになり、アパートや下宿住まいの学生には新聞はもとより「テレビ」が必需品ではなくなった。
実家にもテレビがない、あるいは茶の間にあるのはインターネット接続のテレビ型のディスプレイだったりする。見ているのは、配信された映像番組、あるいは数多くあるケーブルテレビのチャンネルだったりする。視聴できるチャンネルや番組の分母が大きくなり、共通の番組を見る機会が減った、ということなのだろう。
我々の世代で言えば、「8時だョ!全員集合」が放送翌日の教室の話題だった。クラスのほぼ全員が見ていて、見ていないのが数名、話題に乗れなかった。今や既にそんなことはない。翌日教室で話題のテレビ番組などない。一方で、たくさんのDVDがレンタルでき、配信される映画もあるのに、見ている映画のバリエーションが少ない。彼らの世代、テレビで宣伝され、シネコンプレックスで配信され、話題になるハリウッド映画は見ているが、時代や制作された国が違えば見たこともない。親などの他の世代や人たちと、一緒に見る機会が無いのかもしれない。

おかげで、サンプルになるような作品を放課後に見ておいて、と言うことが増えた。それを見越して学校には映像のライブラリーをつくってもらい、たくさんの映像ソフトを集めてもらっている。ところが「見ておいて」と言ったものの、あまり見はしないようだ。ライブラリーでもっとも貸し出しの多いソフトは、ジブリ、ディズニーなどのアニメーション、制作年がごく最近の製作費がおそろしくかかったハリウッド映画だそうだ。サンプルとしてあげているのは古典、定番といったところなのだが。 

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