2016年6月9日木曜日

チープ

学生さんの作品でこういった「嘘」が下手なのは、リアルな現象を再現しようとするからである。なまじ現実を知っている人物が見ると、一目瞭然で「嘘」なので、全体が信用できない、ということになる。
逆手に取ると、「チープ」な仕上がり、という作戦がある。メリエスの作品や、メトロポリスなどの古典的なSF映画は、現在見ると子どもっぽい舞台背景、CGもなく、特撮技術も無く、今よりもはるかに安っぽい見え方だ。しかしそれが今日も見ていられるのは、美術や舞台、衣装を見せているわけではないからだ。サイレントだから音声はなく、画像によって、テーマやコンセプト、作者のメッセージがきちんと伝わるつくりになっている。そういった「様式」や「スタイル」というのがある。ファッション業界で言う「チープシック」がいちばん近いかもしれない。
学生さんが見る今日的な映像では、どうしてもリアルさを追求する表現が多い。丹念に考証をして、お金をかけて道具をつくり、特殊撮影をして、CGで仕上げである。一方で古典と言われる作品をほとんど見ていないので、チープだが面白い、といった世界観を知らない。

上手く使えば、血糊のつもりのアクリル絵の具を塗りたくるなどという身体に良くないことをしなくとも、十分に表現出来るものなのに。 

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