映像制作超初心者が作業する授業である。こちらにとって、学生の反応はある意味ではプリミティブで新鮮である。多くの学生にとっては「映像は夢のような表現」であるようだ。たいていの学生は、今までに扱ったどのような表現よりも多くの情報を的確に、瞬時に伝えるもの、という認識がある。なぜか、と言えば、それまでの学校生活の中で、映像に関する基本的な学習をしてこなかったからである。自分がオーディエンスとして受け取っている印象が、その表現の特徴だと思ってしまうようだ。それはカメラと編集ソフトで出来ている、と思っている。だから、大学でその機材を触れば、自分の思うように表現が出来ると思っている。彼らが見てきたものは、プロ中のプロがつくっていたものであるにも関わらず、である。
すでに機材が低価格化し、スマホで動画が撮影できる時代である。中学高校時代に「映画をつくりました」などという学生もちらほらいる。中学高校の美術の教科書を見れば、映像制作の手引き、のような項目すらある。もっとも、基本的だと我々が思っていることとは少し違うアプローチではあるのだが。
ともあれ、学生がやろうとしていることは、日本語のたどたどしい小学校低学年の子どもが、俳句や短歌をつくる、あるいは小説を書こうとしていることと似ているような気がする。それらしいものは出来るのかもしれないが、基本的な文法を踏まえていないので、こちとら理解に苦しむ、という感じだ。だから、1年生の授業は、学生の作品の裏を読む、謎解きの様相である。
絵を描いたり、粘土で立体を作ったりするのとは、表現の方法論が違う。小学生に油絵の具を渡しただけでは、油絵は描けない。絵の具の使い方、表現できることや出来ないことを知らなければ、表現には至らない。
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