放送業界では昼でも夜でも夜中でも、出会い頭は「おはようございます」という挨拶が定番だ、というのはよく知られた話である。終わりの挨拶はたいていどんな現場でも「お疲れさま」がベースである。
最近メディアで良く見かけるのは、「ご苦労さま」と「お疲れさま」の違いである。我々の世代だと、ハウツー本もなかったし、ネットで情報を集めたり確認したりすることはなかったので、現場で見よう見まねで挨拶を探すことから始まった。若造として現場に入れば、たいていは一番下っ端なので、最後の挨拶は「お疲れさまでした」、あるいは「お先に失礼します」である。上の人から返される挨拶は「お疲れさま」で、「でした」はない。もう少し上の人だと、たいていは「ご苦労さま」、そうではければ「はいはい」「はいよ」などという合いの手である。こんなもんなのだろうと、了見していた。
翻って、メディアで良く取り上げられるのは、現場のいちばん下っ端、私の場合で言えば学生から「ご苦労さま」と言われるようなことである。使い分けをしていた自分としては、確かに妙な気分になる。そんなわけで「使い方の違い」というコンテンツが出来上がる。
なぜなのか、と考えてみると、いまどきの学生さんは「オウム返し」なことが多いと思い当たる。
ずいぶん前からチームティーチングをしている同年代の相方から「先生」と呼ばれることが多くなった。最初は相手に対して教えた覚えもないのに「先生扱い」で面食らった。出来れば止めて欲しい、と言うと、そんなわけにはいかない、そうである。理由を聞くと、「先生」と呼ばないと、学生が同じようには呼ばないからですよ、と言うのである。相方を「ナントカさん」という呼称にしていると、学生が「ナントカさん」と呼ぶのだそうである。学生にとっては「ナントカさん」は同僚でもクラスメートでもなく「先生」なのだが、「先生」という呼称をつけない。オウム返し、というか、TPOがわからない、というか、学生もその相方も、なんとも子どもっぽい対応だなあと思った覚えがある。
「ご苦労さま」「お疲れさま」も同様で、相手から言われたのだからオウム返しにしているだけなのだろう。他の人の挨拶を見て、観察して、TPOを読み取って、自分が使う場合のケースを想定する、というステップを踏まない。違いを知らない、知ろうとしないので、使い分けも出来ない。
大学の授業だからご苦労さまとお疲れさまの違いを教えるのは、ちと守備範囲外ではないかとも思う。大学では「オウム返しでOK」な挨拶をするようにしなくてはならないのかもしれない。やはりここは「ごきげんよう」でシメるべきだろうか。何か違うような気もするが。
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