携帯電話もインターネットも、世界中どこにいても即時に連絡がつく便利なツールである。
電話をかけ、しばらく会話をした後で、今パリなんだよねー、と言われたりする。
メールを投げた返信の送信した場所が、ロンドンだったりする。
地球上の距離感が、ずいぶんと「近く」なったなあと思う。
40年近く前の話になるが、妹がヨーロッパに行くことになった。
彼女は当時スポーツ選手で、ヨーロッパで試合を転戦するのである。
試合の状況、つまり勝てばそのまま逗留、負ければさっさと次の試合の開催地へ行く、というやつだ。日本国内の旅行代理店では「そんなプランは組めない」と匙を投げられた。とりあえず、ヨーロッパオープンの飛行機の往復を買い、あとは現地調達である。ただ、大きな試合の開催地の宿だけは、確保しておかなくてはならない。観客も多いので、開催中の最低限の宿泊先は抑えなくてはならない。
「地球の歩き方」などというガイドブックもなく、もちろんインターネットもありはしない。旅行代理店でざっくりとホテルの連絡先を聞くが、海外電話はまだ回線がよろしくなく、雑音が多くて、通話が間延びする。よくわからないうちに、迷惑電話だと間違えられることが何回か続いた。確実なのはテレックスだと、あるホテルの交換手が教えてくれた。しかし、一般的な市民の家庭にテレックスなどある訳がない。よく取材に来てくれる新聞社の記者に頼んで、新聞社のテレックスでホテルの予約を打たせてもらった。
その後しばらくするとファックスが普及しはじめた。実家では飛びついて機械を購入した。海外宿泊先連絡用にもっとも確実な連絡手段だったのである。
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